Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

美術教育関係再考−1

最近、7年ぶりくらいに美術教育関係でコメントを依頼された。教師の現役の頃のテキストを読み直しつつ考えをまとめたい。 

「IMAGEと主題」にかかる9つのメモ
(昭和61年頃のメモを再構成)
                     平成9年2月13日 堀川紀夫      
このメモ原本の裏面に「美術による教育の未来像への一考察」「美術科の教科性・反ロゴス主義」と大きく書いてある。この頃、造形に関する論理展開において造形原理を持ち出すことを「ロゴス主義」と漠然と定義していた。この考えは現在も同じである。番号を付したこれらのメモに順序性はない。但し、同一時期にメモしたという意味で密接に関連し、一つの円環を構成している。

1 イメージとは観念、概念、記憶、原体験、無意識などと密接に関わる水のようなもの であり、ことばや色、形にしないととらえたり伝えたりできないものである。

2 イメージが発生し、自分の表そうとする内容がはっきりとしてくると、それは主題と 呼ばれるものになり、表現しようとする意志、造形表現活動の中核としてそれを支え、 司る機能を持つ。その意味でイメージも主題も意識の一つの姿である。

3 イメージから主題が決まり、主題からイメージが広まる。イメージと主題との関係は 可逆的で双方向、相互的なの一つの流れである。その流動性の一つの断面や連続的な動 きを捉えてイメージあるいは主題と呼んでいるといってよい。

4 情操を感性の潮流(松原郁二氏)というなら、イメージは感性の広がりであり、主題 とは感性の一つの方向性と言ってよい。

5 イメージと主題との関係は明確に定式化できないものである。それは、人間の意識、 情操や感性に訴えることばとして表現され、感受される広がりによって明確になってく る。

6 主題は、造形的な操作の過程でイメージの原野にらせん的軌跡を描きながら舞い戻り また、研ぎすまされたことば・姿(色、形、形象)として顔を表してくる。イメージと 主題の関係のキーワードとして作品に付ける題名がある。

7 表したいイメージをはっきりさせる手立て、主題を更に練りあげる手立てとして自分 のイメージや主題について名付けることがきわめて重要である。むしろ様々な造形過程 の分節、断面、切り口を名付けることによってしか造形思考を発展させていくことばは 獲得されないのではないか。

8 イメージの広がりとその人が持つ感性の姿としての情操(さざ波、うねり、潮流)と は密接に関連している。

9 イメージと色、形、材質という物理的形象によって作られた造形作品との現象的関係 が問題であり、研究の対象となるべきである。絵に描かれたものは画像であり、イメージそのものではなく、見る人にイメージを与えるものである。