Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

堀川紀夫個展−6

マルセル・デュシャンの作品を実際に見たのは1981年の軽井沢の高輪美術館での「マルセル・デュシャン」展でした。その10年以上前には滝口修造訳の「マルセル・デュシャン語録」を購入してもいたのですが、マルセル・デュシャンについて理念的に理解していたわけではなく、頭に入ったのは作品とされている例えば便器のイメージなどでした。この高輪美術館での展覧会についてはNHK日曜美術館で取り上げられそのビデオは今はDVDレコーダーの中に入れてあり、時々見るのですが、言葉にできるものは未だに少ないのが正直なところです。
確かに言える事は、一番有名な便器「泉」は立体であり、側面、背面からの視点・像もあるという事でした。便器は、アンデパンダン展に出品を拒否された証拠品として残された写真のイメージをその正式なイメージとしてのみ紹介(一部に斜めからの写真もあり)されて来ている事が実物を見て分かったということです。
その後、横浜、サンフランシスコ、パリ、千葉などでマルセル・デュシャン作品を見て来て、便器は立体である事の認識が更に深まってきました。パリ(ポンピードセンター)では撮影がOKでしたので、沢山撮影して来ました。
これらのマルセル・デュシャン理解をふまえ、この度のギャラリー湯山個展でトイレに展示する作品として便器を模刻してみました。
(このトイレは、昨年の大地の芸術祭で改修され使用できるようになったもので、有り難いトイレです。それまで2006,2009年の芸術祭ではトイレは100mくらい離れた民家や公民館へ行くしか無かったのでした。)
数日前、テラコッタ粘土で半日かけてつくった便器=「泉」です。サイズは三分の一くらい。



以下はパリでの撮影。便器を照明を沢山の角度から当てて美しく展示していたのが印象に残っています。100年前にこのような美しく、高度な便器が実際にあり、つまりはそのような都市生活があったわけです。その生活ぶりを想像すると、当時の日本の生活にはこのような便器自体がまだ普及していなかった事が理解できます。



改めて、比較してみて模刻の出来がいまいちです。もう一度試みたいと考えました。