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原発関連時差トピックス

原発用語言い換え危険な印象消す?

東京新聞 2011年12月4日 朝刊

 福島第一原発事故をめぐる政府や東京電力の記者会見では、しばしば珍妙な用語が飛び出す。「事故」と言えばいいのに「事象」が使われる。「老朽化」は「高経年化」、「汚染水」は「滞留水」に。「危険性を隠したがる原子力界の潜在意識の表れだ」と指摘する原子力の専門家もいる。ヘンテコな原子力用語を検証した。 (谷悠己)
 まず、政府がしきりに使いたがる「冷温停止状態」。
 「冷温停止」の本来の意味は、定期検査などで原発の運転を止め、密閉された原子炉の中で冷却水が沸騰していない安全な状態のことだ。
 政府などは「状態」を加えた「冷温停止状態」という言葉をよく用いる。事故収束に向かっていることをアピールするためのようで、細野豪志原発事故担当相は「慎重な表現を使っている」と強調する。しかし、原子炉の密閉性が失われて高濃度汚染水が大量に建屋内に残っている現状は、「冷温停止」の状態とかけ離れている。
 原子力界では、言い換えや造語で、危ない印象を消し去ろうとの動きが続いてきた。
 全国には、運転をはじめて三十年以上たつ原発が二十数基ある。記者会見で、「原発の老朽化」を問うと、担当者は必ずといっていいほど「高経年化につきましては…」と言い換えて答える。
 「古くなった部分は取り換えるから、(原発に)老朽化はあり得ない」のが原子力界の「常識」だという。しかし、圧力容器や格納容器など主要部分は交換できない。
 建屋にたまった放射能濃度の高い汚染水を「滞留水」と言い換えて呼ぶのもひっかかる。表面の放射線量は毎時二〇〇〇ミリシーベルト超もあり、汚染水の方が実情に合う。
 汚染水を浄化して出る高濃度の放射性汚泥は「廃スラッジ」と言い換えているが、同様に人が近づけるような放射線量ではない。言い換えは、問題を見えにくくする。
 片仮名、英字も多用される。ウランに毒性の強いプルトニウムを混合した核燃料は「MOX燃料」と呼ばれる。プルトニウムの使用が最大の特徴だが、「P」の字は含まれない。
 極めて高い放射線量のため、いまだに建屋内の様子がよく分からない福島第一3号機でもMOX燃料が使われている。
 学生に原子力の基礎知識を教える大阪大大学院の下田正教授(原子核物理学)は「都合の悪い単語を言い換えたり、記者会見を難しい用語で乗りきろうとするのは原子力界の常とう手段。福島の事故後にも使い続ける方も問題だが、メディアや市民も分かりやすい言葉を使わせるよう声を上げるべきだ」と話している。

もんじゅ廃炉求め敦賀で全国集会 事故から16年
福井新聞2011年12月4日午前9時47分)
 1995年12月に起きた日本原子力研究開発機構高速増殖炉もんじゅ」(福井県敦賀市)のナトリウム漏れ事故から丸16年となるのを前に、原発反対県民会議などは3日、もんじゅ廃炉を求める全国集会を同市の白木海岸などで開いた。東京電力福島第1原発事故を受け「人々の意識は大きく変わり、脱原発が普通になった。もんじゅにこれ以上、国費の投入は許されない」との抗議文を同機構に提出した。

 同会議、原子力資料情報室などでつくる実行委員会が主催。白木海岸での抗議集会には全国の反原発団体などから約1300人(主催者発表)が参加した。

 原水爆禁止日本国民会議の藤本泰成事務局長が「今こそ脱原発の社会をつくろう」と呼び掛けた。参加者は「もんじゅ廃炉に追い込むぞ」などとシュプレヒコールを上げながら、もんじゅゲート前まで行進。同機構の木村正実管理課長に抗議文を手渡した。

 同市のプラザ萬象では、福島第1原発3号機でのプルサーマル計画を白紙撤回した佐藤栄佐久福島県知事をはじめ、元もんじゅ訴訟弁護団海渡雄一弁護士、京都大原子炉実験所元講師の小林圭二さんが講演した。

 「フクシマ原発の真実」と題して語った佐藤前知事は、原子力安全委員会経済産業省原子力安全・保安院地震学会などの体質を批判した上で「原子力帝国から民主主義の国に戻し、もんじゅが進まないようにしないといけない」と訴えた。

 参加者は集会後、JR敦賀駅前までデモ行進を行った。

 ナトリウム漏れ事故から8日で丸16年となるもんじゅをめぐっては、政府の提言型政策仕分けで存廃を含めて見直すべきと判定されたほか、細野豪志原発事故担当相も廃炉を含めて検討する考えを示している。

(記事の写真のコメント:高速増殖炉もんじゅ」(奥)に向かって廃炉にするよう訴える全国集会の参加者=3日、福井県敦賀市白木の白木海岸)
この記事の写真(左)とテレビ報道の画像を利用して制作した時差スタンプです。