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円山応挙:「幻」の虎の絵、「くいだおれ」倉庫で発見
毎日新聞 2013年04月05日 15時00分(最終更新 04月05日 17時52分)

幻の虎図と呼ばれてきた円山応挙の「水呑虎図」=西宮市大谷記念美術館提供

 江戸中期の日本画の巨匠、円山応挙(1733〜1795)が描いた虎の絵「水呑虎図(みずのみとらず)」が今年1月、大阪市内で見つかった。昭和初期から行方不明になり、「幻の虎図」と呼ばれた作品。大阪名物・くいだおれ太郎のマネジメント会社「くいだおれ」の倉庫に眠っていた。08年に閉店した飲食店「くいだおれ」の創業者、故山田六郎氏の収集品とみられる。

 兵庫県西宮市の市大谷記念美術館で6日に開幕する、虎に関する作品を集めた「とら・虎・トラ展」(同美術館、毎日新聞社主催)で初公開される。

 同美術館によると、絵は1782(天明2)年作で、縦90.5センチ、横141センチ。前方を見据えながら水を飲む虎の姿が、応挙の持ち味の写実的な手法で描かれている。日本にいなかった虎だが、中国絵図を手本にしたとみられる。1928年のオークション目録に記されているが、その後、所在不明になり、写真なども残っていなかったという。

 くいだおれ取締役で山田氏の孫の柿木央久(かきのきてるひさ)さん(46)によると、絵は山田氏が購入したとみられるが、購入先など詳しい経緯は不明だ。当初は大阪市内の自宅に飾られていたが、83年に山田氏が亡くなった後、倉庫に保管されていた。

 作品名などの詳細を知らなかった柿木さんが昨冬、倉庫を整理する過程で知人の学芸員に相談した。紹介された同美術館の下村朝香学芸員が今年1月に鑑定し、「水呑虎図」と断定した。

 山田氏の出身地の兵庫県香美町には、応挙の作品が数多く残る「大乗寺」があり、山田氏も応挙の絵を特に好んでいたという。

 下村学芸員は「絵に描かれた署名や制作年から間違いない。これまで存在は知られていたが、実物を見た研究者がいない幻の作品だった。応挙が最も活躍していた時期のものでもあり、高い価値がある」と話している。

 柿木さんは「応挙の絵と知っていたが、それほど珍しいものだとは思ってもみなかった」と驚いていた。

 同展は5月19日まで。同美術館(0798・33・0164)【米山淳】