Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

With Visible Noise(個展出品作品)

1968年に発行された滝口修造による「マルセル・デュシャン語録」を当時に購入し40年間以上持ってきていますが、それを熟読等して現代美術の思考を深めたという自覚はありません。宝の持ち腐れではなく良書に読書力不足であったわけです。要するに書物を読んで生かす力がなかったのです。
その後デュシャンの展覧会等を見て、10年前くらいからデュシャンの偽物を作る楽しみを覚えて「泉」や「自転車の車輪」などを作ってきました。そのようなアプローチでデュシャンに近づいたような独りよがりをしてきていました。
今回は昨年の手作り試作をふまえ「With Hidden Noise」から考えた新作「With Visible Noise」を発注的につくりました。紹介します。なお「With Visible Noise」はNY在住の美術史家の富井玲子さんが10月12日に我が家に取材に来られた時に訳していただいた反対語ものです。これはデュシャンの偽物というものではありません。デュシャンを引用する本物作品であると考えています。しかし同じような事は誰かが既にやっているかもしれません。この中に何を入れたかは個展に来た人しか分からないということにしておきます。


さて、このつぶれたスチール缶はなんでしょう。この中は名古屋の坂角総本舗製の「えびせんべい」が10枚入っていたのです。これは、富井さんがお土産に持って来てくれたものなのです。それでは何故これがつぶれたのでしょうか。それは、富井さんが越後湯沢に向う新幹線に乗って座席に座ろうとする直前に車中の通路と座席の間の段差に足を取られてこけた結果だったのです。どのようにこけたかはわかりませんが手にしていたバックごと床かどこかに手を付いたわけです。(このことは富井さん談)


その結果、我が家に来てからわかったことですが中に入っていた「えびせんべい」はすべて壊れてしまっていました。また、このスチール缶がクッションの役目を果たして富井さんの華奢な上腕骨を守ってくれたと言う事が分かったのです。
でもせんべいの味が壊れていた訳ではありません。とてもよい味でした。
「名古屋といえば海老せんべい」だそうです。その「えびせんべい」の最後の1/10の形の一例です。本日食する前に記念にスキャンして残してみました。なんだか作品みたいです。でももうこれは私とワイフの腹の中で別の物質になってしまっています。名古屋のえびせんべい割れてアート作品になるという一席でした。