Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

古田洋司個展

古田洋司展「ストライプの造形精神と無限のイメージの喚起力ー菱形シリーズでの展開ー」が6日まで上越市のギャラリー祥で開催されています。昨日はギャラリートークとパーティがあり出席してきました。古田さんは住処も近くてとても身近な存在ですが公募団体の東京展に所属して活動している作家であり私とは違った世界で活躍しているお方です。今回は赤津ただしさんが絶賛的なコメントを寄せています。確かにその作品についてはいくつかの特筆すべき視点はあります。今回のメインはS100号の大作6点。旺盛な制作エネルギーが感じられ見応えは十分です。しかし、私には作品の諸要素が織りなす記号作用に歴然とした破綻が見えてしまいます。正方形の画面に正方形の穴が仕組まれているのですが、穴と凹面、穴なしなどと色々で、統一感がありません。ストライプ、斜投影的処理などで錯覚、視覚を幻惑させ画面に騒動を起こしたいという意図はよくわかるのですがその意図が意図倒れしていると思います。また、小品は作り方が粗雑で質が落ちています。
古田さんは高邁な意図をどうすれば破綻のない作品として成立させる事ができるかもう一度原点に還って問い直すべきです。
作品鑑賞の視点(眼の位置)から逆に考えていくと解決の糸口が見えてくるかと思われます。古田さんの画面内の穴の視覚効果は正面からのみで少し横に視点をずらすと単なる穴になって見えてきます。良い作品は斜めから見てもそれなりに楽しめるものです。
作品展の紹介としては失礼な面がありますが、今回は辛口で書かせてもらいました。


会場一階の正面の作品です。この作品は穴はなく平面仕立ての良い作品です。

参考までに。以下は4年前に新潟日報に書いた古田個展のコメントです。この頃の作品は作品を構築する筋道がはっきりとしていました。
「アートピックス」
双方向に行き交う視線(古田洋司個展)
2007年4月27日〜5月1日 
上越市大嶋画廊025-524-2231)


作品タイトル (City ’06-2)

 今回の出品作は小品を含めて約20点。東京展や富山国際美術展、CAFネビュラ展出品作の凱旋展示を含む大作8点が圧巻である。
 一見すると高層ビルが林立する大都会の印象を思わせる作品が多いが、そのような一次的なイメージから峻別される硬質な世界がある。感性そのものの形象と言うべき色と形そのものが織り成す世界が生成している。リズム感、爽快感、浮遊感が厳としてあり見飽きることがない。
 その絵画原理は明快である。いわゆるシェイプド・キャンバスで、キャンバス自体が矩形ではない幾何学形に作られている。それは図を成し、描かれる地ともなっている。額縁は排除され、エッジが際立ちシャープである。
 ディテールを構成するのは各種のストライプ。それを斜、垂直、平行に組み合わせる基本設計が見られる。彩色はエアーブラシ技法で筆触は皆無である。そのイリュージョンを排した色面とメタリックなグラデーション効果により錯綜する立体感が生み出されている。
 最近作(写真)では前述の地と図の関係を発展させてキャンバスの内側に壁面を見せる窓を切っている。その窓に自ずと照明による陰影の効果が生まれている。それは、絵画と壁面との新たな関係を作っている。
 他にあるイメージやシンボルと結ばれるのではない。そこに視覚的に存在するもので絵画を紡いでいる。視線が地と図の双方向に行き交う中に理知的、現代的な絵画が生成している。
 
フリー・キューレイター  貘三太郎(堀川紀夫)