Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

東京へ(第17回アート・スタディーズ 特別編の感想-4)

続きです。今日は関根伸夫の作品についてです。
1968年の「位相-大地」については、分厚い制作プロセスの記録集が出版されています。すごい人力、恊働、協力によって創りだされたことが余す所なく語られています。この作品の実物は見てはいません。
さて、その次の1968年11月に西武百貨店の7階ホールの長岡現代美術鑑賞展で発表され大賞を得た「位相-スポンジ」についです。私は、この作品をその直後の長岡現代美術館での巡回展で見ています。スポンジの上部が割れて修復してあったことを目撃しています。
この作品について見えない部分に彫刻としての仕掛け、構造が隠されていた事を知ったのは90年代になってからでした。
というのは、長岡現代美術鑑賞展のカタログに載っていた制作図をそのまま頭に入れて、鉄板の重みでスポンジが見事に変形していると思い込んでいたからです。この作品の中に上部の鉄板をささえる芯棒あると言う事を聞いたのは彦坂尚嘉からでした。その芯棒の姿を見た事はありません。この作品の仕組み立体作品としての安定性の確保から当然と言えば当然の話ですが、一種のトリックと言うことができます。制作図に芯棒が描いてなかったことを記憶し、そのままだまされ続けてきていた訳です。

第5回長岡現代美術館賞展カタログより。

もう一つは、「空想-油土」の大きな塊の中は幾つかは分からないですがドラム缶が仕組まれていたのだそうです。これは富井玲子さんのア-トコム・テオリア第6号21p(東京画廊発行)によります。関根さんの言葉として「中にドラム缶を入れることで視覚を優先した」とあります。


続いて、李さんの作品についての「改題」のもう一つの例。
1971年の現代日本美術展の出品作品です。当時のカタログでは作品は三点あってそれぞれが「SITUATION」となっています。

これはカタログに載っているもの。大作を作る前のマケットと思われます。

李さんの「関係項」というタイトルは最近の作品でも続いて付けられています。李さんがこの作品を改題したのが何時なのかはまだ確認できていません。この作品が発表される少し前の1971年1月に「出会いを求めて-新しい芸術の始まりに-」が出版されています。李さんが、今に一貫する制作理念、思想、哲学を確立し、自作を「関係項」に改題つまりは再構築するのはもう少し醗酵してからだったのだと思われます。
以上で第17回アート・スタディーズ 特別編により触発された感想?を終わります。