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原発関連ニュース(7月14日)

クローズアップ2011:「脱原発」方針表明 首相独走、募る疑心
毎日新聞 2011年7月14日 東京朝刊
 「3・11」以降、再生可能エネルギーの利用推進を掲げて「脱原発」の思いをにじませてきた菅直人首相が13日、ついに「原発に依存しない社会」を目指す方針の表明に踏み切った。民主党執行部が首相の退陣時期に想定する8月末まで、残された時間は1カ月半。政府・与党にも諮らない唐突な表明には、できる限りの実績を残したいとの焦りが見え隠れする。「辞めないのではないか」「脱原発解散を打つつもりだろう」−−。与野党の疑心暗鬼は募るばかりだ。

 ◇与野党、延命警戒 「英断歓迎」の声も
 「私が責任を持っている間はもちろん、議論、計画立案を進めるが、私の段階だけですべてできると思っているわけではない」。菅首相は13日の記者会見で脱原発の方針を次期首相に引き継ぐ意向を示し、「延命」の意図を否定した。

 首相は会見前、海江田万里経済産業相民主党岡田克也幹事長に電話し、理解を求めた。岡田氏は視察先の宮城県名取市で記者団に「将来的に原発依存度を減らしていくというのは当然あるべき意見だ」と前置きしたうえで「本格的な議論をするにあたって首相としての方向性を示すのだと思っている」と述べ、具体化は次期首相の下で行うべきだとの考えをにじませた。

 「『脱』は使わないでください」。会見前、枝野幸男官房長官らは政府・与党内の調整なしに脱原発を打ち出そうとする首相にブレーキをかけた。

 昨年6月の就任直後に表明した「消費税率10%」、10月の所信表明演説に盛り込んだ環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加検討など、唐突に打ち上げては政府・与党内の混乱を招いた失敗を繰り返すのを枝野氏らは懸念した。原発事故の発生後も電力事業の発送電分離原発国有化などの発言が「言いっぱなし」「思いつき」との批判を浴びてきた。

 首相は「脱」とは言わなかったものの「原発がない社会を実現する」と明言。与謝野馨経済財政担当相は13日、日本記者クラブで会見し、電気料金の上昇につながる経済リスクを指摘し「脱原発のスローガンは、ある部分だけをみた議論」と閣内から批判の声をあげたが、社民党福島瑞穂党首は「英断を歓迎したい。政権交代の意味があった。自民党だったら脱原発とは言えなかった」と絶賛した。

 「菅さんは確信犯。中身についてはだれも『けしからん』とは言いにくい」(首相周辺)との見立て通り、政策的な方向性を否定する発言は野党からも少なく、批判は首相の手法に集中した。

 公明党山口那津男代表は「再生エネルギー(固定価格買い取り法案)まではやらせてくれと言ったのに、今度はその先の重要な方向性まで言い出す。一歩、また一歩と延命策を図っているとしか見えない」。自民党逢沢一郎国対委員長も「退陣を表明した首相が何を語っても、そういう国づくりが進むとはだれも考えない」と突き放した。

 菅首相が居座り続ける限り、東日本大震災の復興やエネルギー政策の転換へ向けた与野党協力は進みそうにない。その危機感を訴える民主党議員11人が13日、即時退陣を求める連名の文書を首相官邸に提出。続投意欲ばかりが目立つ首相の「独走」に疑念が広がる。【平田崇浩、佐藤丈一、赤間清広】

 ◇「記憶に残る日」環境団体が評価
 菅首相原発に依存しない社会を目指す方針を表明したことについて、環境保護団体からは歓迎の声があがった。

 地球温暖化問題に取り組む気候ネットワークは「歴代首相の中で初めて脱原発を宣言した。エネルギー政策の転換へ大きくかじを切った日として記憶に残る日となる」と歓迎した。また、グリーンピース・ジャパンは「福島第1原発事故を受け、将来世代の安全・安心を最優先に考えれば当然の方針」と評価した。【足立旬子】

 ◇「経済に悪影響」 電力不足の深刻化懸念
 「理念先行で何をどうしたいのか分からない。いつ辞めるか分からない首相の下で対応はできない」。経済産業省幹部は、菅首相の会見を聞いて頭を抱えた。

 定期検査で停止中の九州電力玄海原発2、3号機(佐賀県玄海町)を巡っては、首相指示によるストレステスト(耐性試験)導入で今夏の再稼働が絶望的になったが、テストを1次評価と2次評価に分けたことで「今夏を節電で乗り切り、その後は(比較的短期間で行う)1次評価後の早めの再稼働につなげることは可能」(経産省幹部)との見通しもあった。

 しかし、菅首相は13日の会見で「将来は原発がなくてもやっていける社会を実現していく」と表明した。菅政権が延命するほど電力不足が深刻になりかねない展開に経産省幹部は「在任中は原発を動かさないというメッセージだ。再稼働を目指していた海江田氏は見事にはしごを外された」と反発した。

 ソフトバンクが呼びかけて35道府県が参加した「自然エネルギー協議会」のように、「脱原発」の流れに乗る動きもあるが、経済活動への悪影響を不安視する声は強い。

 経団連幹部は「企業は生産計画を立てられない。雇用維持や企業活動に悪影響を与える」と批判。長谷川閑史代表幹事が原発依存率を段階的に引き下げる「縮原発」を提案している経済同友会も「時間軸や技術的な課題が解決できるのかが全く見えない」(幹部)と、会見の内容を批判した。

 産業界からも「安定的に電力を確保できなければ、韓国や中国との競争には勝てない。海外移転に拍車をかけることになる」(大手電機幹部)と空洞化の加速を心配する声が上がる。

 電気事業連合会八木誠会長は「国のエネルギー政策の大幅な見直しは、わが国の将来の根幹にかかわる極めて重要な問題。方向を誤れば大きな禍根を残す。国民的な議論を十分積み重ねた上で、結論を出すべきだ」との談話を発表した。【宮崎泰宏、野原大輔】

脱原発は首相の希望、内閣の目標でない…枝野氏
(2011年7月14日16時04分 読売新聞)
 枝野官房長官は14日午前の記者会見で、菅首相が13日に表明した将来的な「脱原発」方針について、「遠い将来の希望という首相の思いを語った」と述べ、内閣としての政策目標ではないとの認識を示した。


 首相は記者会見で「将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していく」と明言した。これについて枝野氏は「政府の見解というより、そういったことを視野に入れた議論を進めるというのが政府の立場だ」と説明。「原発をなくすことは内閣としての政策目標か」との質問に、「首相の記者会見ではそこまで言っていない」と指摘した。首相の発言内容について、政府内で事前調整を行ったかについても明言を避けた。

 政府が成長戦略の一環に位置づけてきた原発輸出については「我が国はどの国よりも厳しい安全性の下で(原発を)当面活用していく。輸入する側がどう受け止めるかを含めて、中期的に検討する」と述べ、継続に含みを残した。