Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

関根伸夫「位相ー大地」再制作プロジェクト2011について

関根伸夫「位相ー大地」再制作プロジェクト2011が神戸芸術工科大学キャンバスで公開されています。公開期間は9月26日から10月14日まで(案内チラシより)。私は、1968年の第一回神戸須磨離宮公園現代彫刻展に発表された当時の実物はもちろん見てはいません。今回も遠路のため実物を見ることはできません。作品を画像として見ることができた最初は一年後の芸術生活12月号誌上の「批評家の眼 中原佑介誌上ギャラリー」だったように記憶しています。

その後に今回の案内チラシでも使用されている村井修さんん撮影の画像を見たように思います。
この村井さんの写真には「位相ー大地」にふさわしい瞬間がとらえられていると考えます。凸の円筒の影、凹の穴に落ち込む縁の影、左に二人と思われる人物の影が写っています。晴れた大空に太陽があり、地上の凹凸、起伏あるものに光を降りそそぎそこに影を作っています。この写真は作品をとらえていると同時に自然;大地の大地たる晴れの堂々とした姿をとらえています。当時関根さんが作成したポスターにもこの写真が使用されています。この優れた写真によって、この写真のイメージで「位相ー大地」がヒトビトに認知され広まったと考えるわけです。


私が最初に見た写真は、次の穴に人物の影が写っている方だったかもしれません。

2008年の多摩川での再制作。重機を使用して作ったプロセスをネットで見ることができました。言わば、再制作したのは外観だけということです。
http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2008/11/nobuo-sekine-phase-mother-earth-reborn.html
この写真はオリジナルに近い瞬間をとらえていますが人物の影がありません。

2008年11月09日付けの北澤憲昭さんのコメントを見つけました。
関根伸夫《位相-大地》(再制作)
位相、大地。跡には、でかい落とし穴!
☆以下余談。☆周囲に設けられた柵を越えて穴に近づく。意外と鋭いエッジに土木のプロの技量を感じる。思ったより穴は深い。おそるおそる覗き込むと底に枯葉が二、三枚散り込んでいる。現代美術もまた季節と共にあるという――必ずしも当たり前ではない――感慨を抱く。☆穴の残土を積み上げたシリンダーは、写真から想像していたより、ずっと離れたところにある。☆帰りに回った銀座の関根伸夫展で作者と遭遇。あれは落ちたら怪我をしますねと、穴をめぐる素朴な感想を口にしたら、深い穴があったら縁で立ち止まる、それが人間というものだよと、にこやかに作者は応じた。いつか読んだギブソンの「負のアフォーダンス」という言葉が、場違いの冬の花火のように一瞬ひらめいて消えた。ちなみに須磨のときは柵は設けられず、遠まきに縄が張り巡らされていたとのこと。(北澤憲昭)
2008年11月1日(土)〜9日(日)
多摩川アートラインプロジェクト アートラインウィーク2008
(田園調布せせらぎ公園
「伝説」40年ぶり復活 関根伸夫氏「位相―大地」(朝日新聞)
2008年11月6日11時14分

40年ぶりに再制作された関根伸夫さんの「位相―大地」
 日本の現代美術史上の「伝説」ともなっていた作品が、40年ぶりによみがえった。大地に円筒形の穴を開け、そこから出た土で同じ大きさの円筒を作る、美術家・関根伸夫さん(66)の「位相―大地」だ。東京都大田区内で展開する「多摩川アートラインプロジェクト」の一環として、再制作されたものだ。9日まで見ることができる。

 同作品は68年、神戸須磨離宮公園現代彫刻展のために作られ、朝日新聞社賞を受賞。「掘り続ければ地球に穴が開き、それを境に両者が反転するという思考実験を中断した形」(関根さん)を意図し、直径2.2メートル、深さ2.7メートルの穴と土の塊からなる。会期後は埋め戻された。しかし、大地にうがたれた穴と土の塊の存在が圧倒的で、「もの派」と呼ばれる潮流の原点的存在と見なされた。

 サイズ違いの制作や、ほかの人による複製の試みはあったが、関根さん自身がかかわる同一サイズの再制作は初めて。東急・多摩川駅前の「田園調布せせらぎ公園」の高台に現れた穴と土の塊は、人力中心の40年前とは異なり、主に建設機械で作られた。

 関根さんは、「実物を見たいという声が大きく、再制作した。昔とは土の表情は違うが、どうやっても静かな迫力があると思う」と話す。なお、今回も会期後は埋め戻す。問い合わせは実行委員会(電話03・3731・4126)。(大西若人)

関根伸夫「位相―大地」 再制作プロジェクト2011のオフィシャルコメント
1968年に第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展に発表された、関根伸夫氏による「位相―大地」は、美術界に衝撃的な反響を呼び起こし、「もの派」を含む日本の現代美術の動向に決定的な影響を与えました。また、現代の都市環境、自然との相互の関係のあり方にも深くかかわり、極めて現代的な意義を持っています。
神戸芸術工科大学では、関根伸夫氏の全面的な協力のもとに、ゆかりの神戸の地において43年ぶりに「位相―大地」の再制作と展示を行い、広く一般に公開します。 当時の人々にもたらした、その作品の衝撃的な魅力、土と光、アートと環境との実り豊かな関係を再体験する貴重な機会となります。 若い学生を含めて様々な世代の人々が、本プロジェクトを通じて、今日のアートや環境に対する新しい見方を発見し、新たな創造を生み出す刺激となれば幸いです。

関根伸夫「位相―大地」1968年、(H270×φ220cm)×2、大地
第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 朝日新聞社賞受賞
写真撮影:村井修
プロジェクトは、本作品を原寸で再制作・展示します。

今回の神戸の画像です。次のブログから引かせていただきました。今回も重機で作ったとのことです。
http://d.hatena.ne.jp/higuchi1967/20110928/1317213843



なお、オリジナルの制作過程は最初から完成まできちんと記録され出版されています。このプロセスがあってこその「位相ー大地」です。まだ公開期間中ですので写真を撮影するチャンンスはあります。これから「位相ー大地」を撮影する人は、オリジナルと同じ太陽が影をつくる瞬間を狙ってほしいと思います。