Art Site Horikawa-I

書くことを積み上げ、アート生成に向けての発想・構想力を鍛える。

大久保作品についての覚え書き

この度の「GUNの軌跡」展に出品されている大久保淳二さんの「リンゴの気持ち」は40年以上を経て再制作された作品である。この大久保の原点と言える作品のオリジナルが作られた大事な場面に関与したものとして覚え書いておきます。大久保は描写力も確かで、素晴らしい再制作作品になっています。現在の陶芸の仕事も含め、今回の新展開の筋道を大切にしどんどん進んでほしいものと期待する次第です。(上の作品が再制作作品、下は新展開の作品。ディテールは後に掲載。)

1968年に十日町の中条中に堀川が新採用となり、3学年であった大久保の美術担任になった。堀川は大久保の才能を見抜いてよい成績を与えた。翌年、大久保が高校に入学。その後は仲間や友人のように付き合うようになっていった。その10月頃のこと。堀川の下宿で、大久保の十日町市展出品のためのスケッチを見て堀川がアドバイスし、この作品が生まれた。そして、この作品は瀬木慎一さんの審査により受賞したのである。
この時に大久保が表現のモチーフにリンゴを選んだ前提に堀川を媒介した二つのことが存在している。そのことを明確にし、今後の大久保の更なる展開を期したい訳である。
まずは美術史の上にあった有名なマグリットの「イメージの裏切り」。


そして、堀川が美術の時間に題材に取り上げた最新の知識による中原佑介の「影に関する37の問い」。下記の1,2などを直接引いて提示し、生徒の概念砕き、発想の転換を促す指導をしたのである。私たちは学んだことを基盤に創作しているのである。無から有は生まれてこないのである。
このページを書くために、改めて「影に関する37の問い」を読んでみたが、今なお鋭く、そして爽やかに脳を刺激してくれる素晴らしい問いです。
中原佑介の「影に関する37の問題」より 
1 テーブルの上に1個のリンゴを置く。そのリンゴを見て描くことと、そのリンゴが鏡に映っているのを見て、鏡に映っているリンゴを描くことととは、同じであるか。
2 テーブルの上に1個のリンゴを置く。そのリンゴを見て描くことと、そのリンゴが写された写真を見て、写真に映っているリンゴを描くこととは、同じであるか。
3 テーブルの上に1個のリンゴを置く。そのリンゴを見て描くことと、そのリンゴの描かれた絵画を見て、描かれたリンゴを描くこととは、同じであるか。
4 新聞を描くことと、新聞の紙面を描くこととは、同じであるか。
5 テレビ受像機を描くことと、ブラウン管の映像を描くこととは、同じであるか。

6 スクリーンを描くことと、スクリーンの映像を描くこととは、同じであるか。

7 写真を描くというのは、どういうことなのか。
8 ポスターを描くというのは、どういうことなのか。

9 印刷された漫画を描くというのは、どういうことなのか。

10 印刷された活字を描くというのは、どういうことなのか。

11 印刷された数字を描くというのは、どういうことなのか。
(〜以下37までの問題がある。この問いの初出は、おぎくぼ画廊発行「眼」1966年4月16日号)
(作品のディテール.13日に掲載